ピアノの効用 本当に頭が良くなるの? ピアノ効果とは? 

Pocket

「何か楽器ができたらいいな」、中でも「ピアノが弾けたらいいな、子供にも弾けるようになってもらいたいな」、と思っている方は多いと思います。実際、ピアノは非常に高価であるにもかかわらず、昔から「子供の習い事人気ランキング」の上位にありました。

しかし、現在はその座を英会話や学習塾に明け渡しつつあります。習い事に求めるものが変わってきたためです。

つまり学校での学習の先取り、あるいはサポート的なことであったり、将来的なスキルにつながるものなど、実利を求める傾向が強くなってきたのです。

では、ピアノには何の実用性もないのでしょうか?

ここでは、そんな疑問をもつ方々のためにピアノの効用についてお話したいと思います。

ピアノを習っている方、弾く方はその体験から大いに納得するでしょう。習ったことがない方も、その効用に新鮮な驚きと興味を持つはずです。

では、これからピアノの効用を3つ紹介します。

本当にピアノで頭が良くなるの?

昔から「ピアノを習うと頭が良くなる」と言われてきました。しかし現在では単なる通例としてではなく、脳科学的にその効果が実証されています。

教育評論家の尾木ママこと尾木直樹さんも、その見地から子供の習い事に「ピアノ」を一押ししています。

では、なぜ「ピアノを習うと頭が良くなる」のでしょうか。まず、「ピアノを弾く」という作業がどのように行われるか整理してみます。

1. 楽譜を見る                            

2. 楽譜の情報を記憶する

3. 弾こうとする

4. 鍵盤の場所や距離感を認知

5. 弾く

6. 聴く

7. 処理(「これはド、これはミ…」などと理解)

8. 運動調節(弾いた音を聴いて「間違えた」「もっと強く弾こう」などの軌道修正を行う)

ピアノ演奏中は1~8の作業を、脳の各担当部分が常に新しい情報を取り入れながら、連続で行っています。

つまり、非常に多くの脳の認知機能が、フル活動しているわけです。

活動に関わる脳の領域は活性化します。そしてそれを継続的に繰り返すことによって更に発達が促進され、右脳と左脳を結ぶ太い束、「脳梁」が太くなります。脳梁が太い人はマルチタスクに優れ、物事に臨機応変に対処できると言われています。

また楽譜を見て、それを短期的に記憶するというような「作業記憶」が優れている人は、学業や仕事において優秀であることが多いそうです。

実際、東大生の習い事で一番多いのはピアノだそうです。TBSの「東大王クイズ」という番組で人気を博している、鈴木光さんもピアノを習っていたようですね。

また、お医者さんにもピアノを嗜む方は多いのです。「げんこつ山のたぬきさん」や「おべんとうばこのうた」でお馴染みの作曲家、故小森昭宏氏も医師でした。

脳をフル稼働させるピアノ、頭が良くなるわけですね。認知症予防アンチエイジングにも役立ちそうです。

ピアノで脳が変化?

さらに、以前ロンドンのサンデータイムズ紙が伝えたところによると『9か月にわたり、ピアノのレッスンを受けたグループ、コンピューターのレッスンを受けたグループ、そして何もトレーニングを受けなかったグループとを比較した結果、ピアノの演奏を習ったグループは、知能テストの成績が35%改善されたが、他の二つのグループはわずかしか、あるいは全く改善が見られなかった。』そうです

。そして、研究者たちは、『一日に10分でも規則正しい練習をすることが「子供の推論や思考方法の長期的な改善」に貢献することを実証した。』と続けています。

この、「子供の推論や思考方法の長期的な改善」は、ピアノ講師には大いに実感できることです。

これを裏付けるある生徒さんの例があります。

Sちゃんは1年生で入会しました。とてもしっかりした賢い女の子でしたが、恥ずかしがり屋さんで、緊張しやすいタイプでした。レッスン中での録音でさえ、弾き終えると手に汗をびっしょりかいてしまうほどです。

ですから、一度も発表会に出たことがありません。

ところが、4年生の2月末のある日、お母さまからメールをいただきました。それは、「『6年生を送る会』の合唱の伴奏者のオーディションを受けたいと、楽譜を持ち帰ってきたので、レッスンしてもらえませんか。」というものでした。

私はとても驚きました。レッスンでの仕上げ演奏でも緊張してしまうSちゃんが、学校のイベントで合唱の伴奏をする、しかも「立候補」するなんて、考えられなかったからです。もちろん喜んでレッスンを引き受けました。

そして翌日、Sちゃんが持ってきた楽譜を見てもう一度驚きました。

「むずかしい!」

その時のSちゃんの技量では、数日後に行われるというオーディションには、とても間に合いそうにありません。Sちゃんもそれは分かっていました。しかしそれでも「やってみたい」と。2日連続で特訓し、出来るだけのことはやりました。

残念ながら、新型コロナの影響で「送る会」の中止が早くに決まり、オーディションも当然行われませんでした。でも、このことでSちゃんの中でいつの間にか起きていた大きな変化に、ご両親も私も気付く事ができたのでした。

この変化のプロセスは、このように考えられると思います。

1. ピアノを弾く→練習時間を作るために時間管理、自己管理が良くできるようになる

2. 毎日練習する→日々成長している実感→先生に褒められる→自己肯定感が向上

3. 上手に弾けるようになる→先生や両親に褒められる→達成感により自己効力感が向上

4. 自己肯定感、自己効力感の向上によりポジティブな思考が構築される

思考が変わると行動が変化します。ですから、「ピアノを弾く」ということは、頭が良くなるだけでなく、生きるチカラがつくということにもなるのですね。

そのほかのピアノ効果

頭が良くなる」し、「生きるチカラ」にもなるピアノです。でも、いくらためになることでも、楽しくなければやりたくないですよね。「体に良い食べ物だ」と言われても、おいしくなければ食べたくないのと同じです。

安心してください。ピアノは楽しいです。

「ドーパミン」という言葉を聞いたことがある方は、多いのではないでしょうか。これは、脳の「側坐核」という部位から分泌される脳内物質です。これが大量に分泌されると、「ランナーズ・ハイに近い状態になるそうです。ランナーズハイとは、長時間走った時に得られる幸福感のことです。

では、この「ドーパミン」が分泌されるのはどんな時なのでしょうか。ピアノを弾くという事に絞って考えた場合、次の3つになります。

1.実際に行動を起こしている時 →勉強や運動をするなど。もちろんピアノを弾くことも含まれます。

2.好きな音楽を聴いている時 →好きな曲を弾けば、当然聴くことにもなりますね。

3.行動が報酬へ結びつくと期待を感じる時 →「曲が弾けた」という達成感は脳に報酬効果を与えると言われています。また、演奏を人から「褒められる」のも報酬ですね。

いつもは練習熱心とは言えない生徒さんが、大好きなポップスやアニメの曲を宿題にすると、あっという間に弾けるようにしてくることがあります。

これは、「ピアノを弾く」+「好きな曲を(弾く)聴く」ことでドーパミンが大量に分泌し、「楽しい」と感じて何度も弾くからでしょう。本当に、好きな曲が弾けるようになると、レッスン室に入るや否や、椅子にも座らずにその曲を弾き始める子は珍しくありません。

「上手に弾けるようになったね。もう…もういいよ。(苦笑)」と言われるまで何度も弾いてくれます。楽しいのですね。

また、発表会後にモチベーションがアップすることがあります。これも、発表会で立派に弾けたという達成感と、周囲から褒められたことによるドーパミンの分泌が、「ピアノは楽しいというマインドにさせるからです。

また、「ピアノを弾いて楽しい」、「幸せだ」と感じる主観的な幸福度が増すことは、ストレスレベルを下げるとも言われています。ピアニストに長命な人が多いのは、このことも一つの理由でしょう。

 

まとめ

ここまでピアノの効用について解説してきました。

ピアノを弾く事が非常に多くの脳の機能を使うということ、それによって、私達は図らずも大きな良い影響を受けている、ということが分かりました。

まとめてみましょう。

*ピアノを弾くことは脳の全身運動。継続的に行えば脳の働きが促進されて頭の働きが良くなる。頭の老化防止にもなる。

*ピアノの練習を日常に取り入れると、自己コントロールが出来るようになり、自己肯定感、自己効力感が高まる。それによりポジティブな思考ができるようになる。

*好きな曲を弾く(聴く)ことで幸せ物質のドーパミンが分泌され、満たされた気持ちになり、主観的な幸福度が増す。

何かを習得するためには日々の「練習」が大切ですよね。ピアノも同じです。しかも楽器は高価で場所も取る、という事を考えると、ピアノを習うという事はそれほど簡単なこととは思えません。

しかし、「主観的幸福度が増す」という一点だけを考えても、「ピアノを弾く大変さを補って余りある」ものでしょう。

そして、最大の効用であるこの「幸福感」こそが、ピアノを弾く多くの人を虜にしているのだと思います。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

ホームページへはこちらから

https://piano-workshop.net/myj/aso/

 

 

 

 

 

 

関連ページ